デンマークの自転車通勤促進策 – 税制優遇で社会的利益を

デンマークは自転車大国として知られていますが、意外にも自転車利用を促進するための税制優遇策では他のEU諸国に遅れをとっているようです。デンマーク自転車連盟の理事会が2024年8月に採択した提言について、その内容を紹介します。

この提言は様々なメディアで取り上げられました。

自転車利用促進の社会的メリット

自転車利用が増えることで、社会に大きな経済的メリットがあることが指摘されています。

デンマーク産業連盟の分析によると、自転車利用が10%増加するだけで、年間25億クローネ(約500億円)の社会経済的な健康上の利益が得られるとされています。
交通省の試算では、1kmの自動車移動を自転車に置き換えることで、社会に8.39クローネ(約170円)の利益があるとのことです。電動自転車の場合は5.36クローネ(約110円)となっています。
これは、身体活動の増加による公共医療費の削減や、道路の渋滞緩和などによるものです。
デンマーク産業連盟によると、道路の渋滞による社会的コストは年間300億クローネ(約6000億円)以上にのぼるとされています。

企業や公共機関でも、従業員の健康増進やCO2削減に向けて自転車利用を促進する動きが広がっています。

例えばオーフス市では、2030年までのCO2排出ゼロを目指し、業務用の電動自転車を大量に導入する計画があります。20km未満の移動を電動自転車に置き換えることで、自動車利用を大幅に削減できる可能性があるとのことです。

しかし、現行の税制がこうした取り組みの障害になっているケースもあるようです。

デンマーク自転車連盟は、以下のような税制改正を政府に提言しています:

これらの提言が実現すれば、企業の自転車促進の取り組みを後押しし、従業員の自転車通勤を支援することができるでしょう。

日本でも自転車通勤の促進は課題となっていますが、デンマークの事例は参考になる点が多いと思われます。特に以下の点が注目されます:

日本でも、自転車通勤の促進に向けて、こうした包括的な自転車に乗ることに直接的なメリットがあるアプローチを検討する価値があるのではないでしょうか。健康増進、環境負荷低減、渋滞緩和など、自転車利用の拡大は様々な社会的課題の解決につながる可能性を秘めています。

デンマークの自転車連盟の提言は、自転車利用促進のための税制優遇策として具体的かつ包括的なものとなっています。自転車大国として知られるデンマークでさえ、さらなる自転車利用促進に向けて制度の見直しを進めようとしている点は興味深いです。

日本においても、自転車通勤の促進は重要な課題です。デンマークの事例を参考に、税制面からのアプローチを含めた総合的な施策を検討することで、より多くの人々が自転車通勤を選択しやすい環境づくりにつながるのではないでしょうか。

自転車利用の増加は、個人の健康増進だけでなく、社会全体の経済的利益や環境負荷の低減にもつながります。今後、日本でもこうした観点から自転車政策を見直し、より自転車フレンドリーな社会の実現を目指すことが期待されます。