目次
この資料は、コペンハーゲン市が発行した「Mobilitetsredegørelse 2024」(モビリティ報告書2024)の要約です。これは、コペンハーゲン市の技術・環境委員会(Teknik- og Miljøudvalget)の管轄下にある交通に関する取り組みの全体像を提供するブリーフィング資料であり、交通手段、交通による効果、および都市が講じる介入策について包括的に概説しています。資料は、近年の交通発展状況に関する現状報告と、2035年までの交通発展の見込みを含んでおり、特に歩行、自転車利用、駐車、交通安全、コペンハーゲン市民の交通習慣、そしてコペンハーゲン市の交通モデル「COMPASS」に関する詳細な状況が盛り込まれています。さらに、子どもや若者にとって安全な道路整備の取り組みや、首都圏におけるモビリティ分析の進捗についても新たな知見を提供しています。
このページ内容は学術・研究目的のための非公式な私訳であり、コペンハーゲン市の公式文書ではありません。デンマーク語の原文のみが公式版です。この翻訳からいかなる権利も収益も派生しません。(This is an unofficial, non-commercial translation for academic and research purposes. It is not an official document of the City of Copenhagen. The original Danish document remains the only official version. No rights can be derived from this translation.)
原文 https://kk.sites.itera.dk/apps/kk_pub2/index.asp?mode=detalje&id=2796
コペンハーゲンの交通が目指す未来
コペンハーゲンでは、市民の多くが週に複数の交通手段を利用しています。歩行、自転車、公共交通は自動車より省スペースで環境負荷も低いため、市はこれらの利用を推進しています。新しいビジョン「Vores København (我々のコペンハーゲン)」や自転車インフラの基準「Cykelfokus 2024」に基づき、より持続可能で快適な都市を目指しています。
自転車
省スペースで健康的。気候目標達成の鍵。
徒歩
最も基本的な移動手段。都市の活気を生む。
公共交通
大量輸送を可能にし、渋滞を緩和する。
目標と現実:2025年交通目標の達成状況
「Kommuneplan 2019」では2025年までの交通目標が設定されています。2023年の実績と比較すると、目標達成には更なる取り組みが必要な状況が見えてきます。
通勤・通学の主役は自転車
特に通勤・通学においては、自転車利用率が非常に高いです。しかし、「通勤・通学の半分を自転車で行う」という目標達成まであと一歩です。
コペンハーゲン市民の移動手段 (市内・通勤通学)
目的地がコペンハーゲン市内の通勤・通学に限定すると、自転車の利用率は58%に達し、最も主要な交通手段となっています。自動車への依存度が低いことが特徴です。
走行距離の変化 (2017年比)
2017年からの変化を見ると、自動車の総走行距離が減少する一方で、自転車と徒歩による移動が大幅に増加しており、交通行動のシフトが進んでいることがわかります。
コペンハーゲンの交通政策:市民のための都市づくり
デンマークの首都コペンハーゲンは、市民の生活の質を高めるため、先進的な交通政策に取り組んでいます。ここでは、その3つの柱である「歩行者・自転車インフラ」「交通安全」「複合交通」について、具体的な事例とともにご紹介します。
1. 歩行者と自転車に優しいインフラ
コペンハーゲン市は「世界最高の自転車都市」を目指し、気候変動への影響を減らし、誰もが暮らしやすい都市空間を実現するため、歩行と自転車利用を積極的に推進しています。
コペンハーゲンのサイクリストの97%が、自市を自転車都市として「満足」と回答しています。
Gothersgadeの改修:安全性の向上
- これまで自転車道がなかった区間に新たに設置し、全区間で両側に自転車道を完備。
- 自動車の速度制限を40km/hに引き下げ、ロードバンプも設置。
- 歩行者の横断を助ける路側帯の拡張や、視覚障害者向けの触覚タイルを整備。
Dybbølsbro交差点の改善:渋滞の解消
- 二方向自転車道を交差点に対して斜めに延長し、サイクリストがより直接的に移動可能に。
- 信号機を改良し、ラッシュ時には自転車と歩行者を優先。
- 結果:自転車交通量が12%増加し、自動車交通量は13%減少。
週末の清掃活動:清潔な都市の維持
- 職員は土日も早朝5時から清掃作業を開始。
- 交通量の多い場所では、ごみ箱を1日に最大3回回収。
2. 道路上の安心と安全
市は「交通事故ゼロビジョン」を掲げ、2025年までに交通事故による死傷者をゼロにすることを目指しています。交通安全の向上は、生活の質や健康、環境に優しい交通手段の促進に直結します。
現在、サイクリストの76%が市内の自転車利用に安心感を抱いています。(2025年の目標は90%)
Raffinaderivejの改善:危険区間の解消
- 重量交通の多い狭い道路で、サイクリストと歩行者を車道から分離する専用ルートを建設。
- 幅3.5mの二方向自転車道と、幅1.5mの歩道を整備。
- 夜間の安全確保のため、ポール式照明と新しい信号システムを導入。
アートによる安心感の創出
- Sjælør駅に、地元グループと連携してタイル張りの壁面アートとLEDレインボー照明を設置。
- アートと照明が、都市空間に安全な雰囲気と彩りをもたらしています。
3. 複合交通(組み合わせ移動)
徒歩、自転車、公共交通機関を組み合わせた移動をより快適にすることで、自動車への依存を減らします。
2025年までに、移動全体の75%を徒歩・自転車・公共交通の組み合わせにすることを目指しています。
20%
の市民が週に数回、自転車と公共交通を併用
12%
の市民が「駐輪場が改善されれば併用を検討する」と回答
自転車駐輪場の増設と行動変容の取り組み
- 駅周辺での不適切な駐輪自転車の移動を試行し、駐車マナーの改善効果を確認。
- 案内表示や一時的な駐輪ラックの設置により、歩行者の通行を妨げる駐車行動が改善。
- 2023年には、主に駅周辺に合計1,140台の新しい自転車ラックを設置。
バス停と連携したカーゴバイク駐輪場
- 複合交通を支援するため、バス停周辺にカーゴバイク用の駐輪場を設置。
- 新しい標準ラックを開発し、市内9か所のバス停に34台、複数のメトロ駅に60台を設置。
駅での自転車環境改善による公共交通利用者の増加
- DSB(デンマーク国鉄)と協力し、駅の駐輪スペース確保や質の向上、盗難対策を推進。
- 特にニーズの高いNørreport駅、コペンハーゲン中央駅などで協力プロジェクトが進行中。
交通発展のモデリング
コペンハーゲン首都圏における交通の未来予測
2035年の主要予測:首都圏のモビリティ変化
80万回
平日1日あたりの移動増加数
1,150万回
平日1日あたりの総移動回数
+6%
人口増加
+3%
1,000人あたりの自動車保有台数
移動目的別分析:レジャー vs 通勤・通学 (2035年)
レジャー目的の移動
全移動の69%を占め、1日あたり52万回増加する見込み。
交通手段の内訳:
通勤・通学目的の移動
レジャーに比べ、公共交通機関の利用率が高い傾向。
交通手段の内訳:
交通手段別インサイト
自転車交通
コペンハーゲン等で+11%増加。移動の83%が5km未満。
自動車交通
全移動の45%が5km未満の短距離。平均移動距離は約12km。
トラック交通
約+11%増加し、総交通量の8%を占める。
地域内移動の特色
コペンハーゲン & フレゼレクスベア
地域内移動において、自転車が50%、公共交通が19%と高いシェアを占める。
その他の地域
2035年には自動車が主要な交通手段となる見込み。公共交通の割合は4%〜7%に留まる地域も。
環境・気候への影響
+3%
自動車交通量の増加により、騒音にさらされる住宅が増加。
-10%
交通からのCO2排出量は削減。電気自動車への転換が主な要因。
↓
NOxおよび粒子状物質汚染も、EV化によりわずかに減少する見込み。
国際協力
- EU自転車宣言: 2030年までに欧州での自転車走行距離を2倍にする目標。
- ワールドツアー: 2025年からコペンハーゲンで開催。自転車都市としての地位を強化。
- ボゴタ市との連携: 2024-2026年にかけて知識共有を実施。