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デンマークのサイクリングと飲酒についての概要
デンマークは世界有数の自転車大国として知られていますが、自転車と飲酒の組み合わせは危険を伴う可能性があります。この記事では、デンマークコペンハーゲン在住の日本人がデンマークにおける自転車での飲酒運転に関する法律、規制、そして社会的な影響について詳しく解説します。デンマークの自転車文化の一面を紹介しながら、安全な自転車利用の重要性を読者の皆様に伝えることです。自転車愛好家や交通安全に関心のある方々に、デンマークの法律や慣行についての理解を深めていただくとともに、日本の交通安全への示唆も提供したいと思います。この記事では、以下の点について詳しく見ていきます。
- デンマークにおける自転車での飲酒運転に関する法律
- 罰則と取り締まりの実態
- 社会的な影響と安全キャンペーン
- 日本との比較と学べる点
デンマーの飲酒ルールの基本
1. 年齢制限:
– アルコール摂取の年齢制限は何とありません。法的には何歳でも飲酒は可能です。日本から見ると驚きですね。制限されているのは購入だけです。
2. 購入制限:
– 16歳以上:アルコール度数16.5%未満の飲料(ビール、ワインなど)の購入が可能
– 18歳以上:すべての種類のアルコール飲料の購入が可能
– アルコール販売店は、購入者の年齢確認を行う義務がある
– スーパーマーケットや小売店では、22時以降のアルコール販売が禁止されている地域もある
3. デンマークの飲酒文化と価値観:
– デンマークでは、比較的若者の段階から飲酒が社会的に受け入れられています。高校卒業時には既に相当な割合で飲酒が一般化。 9年生(15-16歳相当)の男子生徒の84%、女子生徒の同程度の割合が飲酒を経験しているという調査結果があります。さらに、毎週アルコールを飲む11~15歳の割合は2022年で15 歳: 27% (男子)、22% (女子)。
参照:https://blaakors.dk/viden-fakta-og-statistik/unge-og-alkohol
4. 健康と安全に関する取り組み:
– 政府は、若者の飲酒開始年齢を遅らせることを目標としています。
参照:https://www.ft.dk/samling/20161/almdel/suu/bilag/329/1758605.pdf
– 健康当局は、18歳未満の飲酒を控えるよう推奨しています。
https://vidensraad.dk/sites/default/files/node/field_downloads/vidensraad_ungesalkoholkultur_indhold_digi_3.pdf
デンマークでは、アルコールに対して比較的寛容な文化であることがわかりますね。中高生にに酒飲んで自転車運転させたらどうなるか、考えただけで危ないと思います・・・
自転車の飲酒運転に関する法律
デンマークでは、自動車とは異なり、自転車の運転に関して明確な血中アルコール濃度の制限は設けられていません。しかし、これは自転車での飲酒運転が完全に合法であることを意味するわけではありません。デンマークの交通法(Færdselsloven)第53条第3項によると、自転車は「安全に運転できない状態」で乗ってはいけないと規定されています。この「安全に運転できない状態」には、アルコールの影響も含まれます。具体的には、警察官の判断により、自転車運転者がアルコールの影響で安全に運転できないと判断された場合、罰金が科せられる可能性があります。この判断は主観的なものであり、明確な数値基準はありません。
参照:安全交通評議会 https://sikkertrafik.dk/
*自動車の場合は明確に血中濃度(%)が0.05を超えてはならなとされています。
アルコール制限と罰則
自転車運転者に対する具体的なアルコール制限はありませんが、警察が安全運転が困難だと判断した場合、1,500クローネ(約30,000円)の罰金が科せられます。この罰金額は、繰り返し違反した場合でも同じです。重要な点として、自転車での飲酒運転で運転免許が剥奪されたり、免許証にペナルティポイントが付くことはありません。これは自動車の飲酒運転とは大きく異なる点です。しかし、自転車での飲酒運転は自身や他の道路利用者に危険をもたらす可能性があるため、法的な罰則以外にも重大な結果をもたらす可能性があります。例えば、事故を起こした場合、保険の適用が拒否される可能性があります。このように、デンマークでは自転車での飲酒運転に対して、明確な数値基準はないものの、安全運転の責任を個人に課す形で規制が行われています。次のセクションでは、この法律がどのように実際に適用されているか、そして社会にどのような影響を与えているかについて詳しく見ていきます。
歴史
自転車の飲酒運転に関する法律の発展
デンマークでは、自転車の飲酒運転に関する法律は長年にわたり比較的緩やかな状態が続いてきました。自動車とは異なり、自転車に対しては明確な血中アルコール濃度の制限が設けられていません。しかし、交通安全への意識の高まりとともに、自転車の飲酒運転に対する規制も徐々に強化されてきました。現在の法律の基礎となっているのは、デンマークの交通法(Færdselsloven)第53条第3項です。この条項では、自転車は「安全に運転できない状態」で乗ってはいけないと規定されています。
年代を通じた取り締まりの変化
- 初期の対応:
当初、自転車の飲酒運転に対する取り締まりは比較的緩やかでした。明確な数値基準がなかったため、警察官の主観的な判断に頼る部分が大きかったのです。 - 罰則の導入:
時代とともに、自転車の飲酒運転に対する社会の認識が変化し、より厳しい対応が求められるようになりました。その結果、現在では警察官が安全運転が困難だと判断した場合、1,500クローネ(約30,000円)の罰金が科せられるようになっています。何年から導入されたかは不明。 - 取り締まりの強化:
近年、特に都市部では自転車の利用が増加しており、それに伴い飲酒運転の問題も顕在化しています。例えば、コペンハーゲン警察は最近、飲酒した自転車運転者に対して多数の罰金を科しており、今後も重点的に取り締まりを行う方針を示しています。 - 社会的な啓発活動:
法律の強化だけでなく、自転車の飲酒運転の危険性に対する社会的な啓発活動も活発化しています。例えば、デンマークサイクリスト連盟は、飲酒後の自転車利用を控えるよう呼びかけています。 - 若者への注目:
特に若者の間で自転車の飲酒運転が問題となっています。©Kantar Public for Gjensidige によって、2023 年 2 月と 3 月に代表的に選ばれた 18 歳以上のデンマーク人 1,009 人を対象に実施された調査によると、過去 3 年間に酒気帯び状態で自転車に乗ったことがある人は35% (18~29歳)。が飲酒後に自転車を運転し、制御を失った経験がある人は27%。これを受けて、若者を対象とした啓発活動や教育プログラムの重要性が認識されるようになってきました。
参照:https://via.ritzau.dk/pressemeddelelse/13682465/flere-end-hver-tredje-unge-korer-fuld-pa-cykel-sa-mange-kommer-til-skade?publisherId=9709319
このように、デンマークでは自転車の飲酒運転に関する法律と取り締まりが徐々に厳格化されてきました。しかし、依然として明確な数値基準がないことから、個人の責任と警察官の判断に委ねられている部分が大きいのが現状です。
罰則と罰金
デンマークでは、自転車の飲酒運転に対して明確な血中アルコール濃度の制限は設けられていませんが、以下のような罰則が適用されます:
- 基本的な罰金:
警察官が安全運転が困難だと判断した場合、1,500クローネ(約30,000円)の罰金が科せられます。この金額は繰り返し違反した場合でも同じです。 - 運転免許への影響:
自転車の飲酒運転で運転免許が剥奪されたり、免許証にペナルティポイントが付くことはありません。これは自動車の飲酒運転とは大きく異なる点です。 - その他の影響:
法的な罰則以外にも、事故を起こした場合に保険の適用が拒否される可能性があります。
警察の取り締まり
警察の取り締まりは以下のような特徴があります:
- 主観的判断:
明確な数値基準がないため、警察官の主観的な判断に基づいて取り締まりが行われます。安全に運転できない状態かどうかを個別に判断します。 - 重点的な取り締まり:
コペンハーゲン警察は、特定の場所や深夜の時間帯に重点的な取り締まりを行う方針を示しています。これは問題が多発する場所や時間帯を狙った効果的な取り締まりを目指しています。特にフェスティバル会場などへ自転車で集まって飲酒して変える人が多数いるエリアで実施された実績があります。1年間コペンハーゲン近辺で暮らしていますが、飲酒運転の取り締まりを見たことはありません。 - 社会的啓発活動との連携:
警察の取り締まりだけでなく、自転車の飲酒運転の危険性に対する社会的な啓発活動も活発化しています。例えば、デンマークサイクリスト連盟は、飲酒後の自転車利用を控えるよう呼びかけています。
これらの統計、罰則、取り締まりの実態から、デンマークでは自転車の飲酒運転が社会問題として認識され、対策が講じられていることがわかります。特に若者を中心に問題が深刻化しており、法的規制と社会的啓発の両面からアプローチが行われています。しかし、明確な数値基準がないことから、取り締まりの一貫性や効果についてはあまり実効性が無いように感じます。
自転車の飲酒運転削減のためのキャンペーン
- 「Stop spritkørsel(飲酒運転をやめよう)」キャンペーン:
デンマーク道路安全協議会(Rådet for Sikker Trafik)は、飲酒運転全般を対象とした「Stop spritkørsel」キャンペーンを展開しています。このキャンペーンは主に自動車を対象としていますが、自転車の飲酒運転にも注意を喚起しています。 - デンマークサイクリスト連盟の取り組み:
デンマークサイクリスト連盟(Cyklistforbundet)は、安全な自転車利用を促進するためのさまざまなキャンペーンを実施しています。これらのキャンペーンの中で、飲酒運転の危険性についても啓発活動を行っています。
電動アシスト自転車の飲酒運転規制
電動アシスト自転車に関しては、通常の自転車と同様に明確な血中アルコール濃度の制限は設けられていません。しかし、安全に運転できない状態での運転は禁止されており、警察官の判断により罰金が科される可能性があります。こちらの電動アシスト自転車は時速24kmまで簡単に加速できてしまうので、さらに危険です。
他国の法律との比較
デンマークの自転車飲酒運転に関する法律は、他の国々と比較してやや緩やかな側面があります。
– オーストラリアでは、すべての州で自転車の飲酒運転は自動車と同様に扱われ、罰金や教育プログラムの受講が義務付けられています。
– ドイツでは、自転車運転者の血中アルコール濃度が1.6‰を超えると、減点3点、罰金、医師の診断書提出が必要となります。
アルコールと交通安全全般
アルコールは運転能力に深刻な影響を与えるので、飲んだら乗るなが基本です。
– 血中アルコール濃度(BAC)が0.08g/dLに達すると、事故リスクが指数関数的に増加します。
– BACが0.02でも視覚機能の低下や複数タスクの処理能力の低下が始まります。
– EUでは、全交通事故死亡者の約25%がアルコール関連とされています。
https://www.nhtsa.gov/risky-driving/drunk-driving
まとめ
デンマークの自転車文化は世界的に有名で、日常生活に深く根付いています。しかし、自転車の飲酒運転に関する法律は他国と比べてやや緩やかです。明確な数値基準がないため、個人の責任と警察官の判断に委ねられている部分が大きいのが現状です。
普段現地で生活していても、ちょっとした集まりで、自転車で来て軽くビールを飲んで家に帰るのは当たり前のように行われています。
デンマークの自転車文化は素晴らしい面が多くありますが、飲酒の安全面は課題のように思います。